今月のコラム

今月のコラム

わんちゃんの混合ワクチン
先月に引き続き今月はわんちゃんの混合ワクチンについてご紹介します。
※狂犬病ワクチンについては、2010/1/27の今月のコラムでご紹介しましたのでご参照ください。

・ワクチンを打っていれば病気にならないんでしょ?
・いくつか種類があるって言われたけどよく分からないわ…
・ワクチン接種のハガキが届いたからとりあえず打っておこうかしら
                   という方の参考になれば幸いです。

◆ワクチンの種類
 混合ワクチン:犬のウイルス・細菌による伝染病を予防するための注射
  ●コアワクチンとノンコアワクチン
     コアクワクチン:すべての犬に接種するよう勧告されているワクチン
     (ジステンパーウイルス・パルボウイルス・アデノウイルス・狂犬病ウイルス)
      ・致死率の高い伝染病
      ・人獣共通感染症で人の健康に甚大な被害を及ぼす可能性がある伝染病
      ・広く流行し、多くの動物に被害を与える伝染病
           上記のいずれかを予防するためのワクチンです。

     ノンコアワクチン:飼育環境や伝染病の流行状況によって接種するよう
              勧告されているワクチン
     (パラインフルエンザウイルス・コロナウイルス・レプトスピラ)

  ●生ワクチンと不活化ワクチン
     生ワクチン:生きた病原体を弱くした(弱毒化)ワクチン。
          効果が早く現れ、長く持続します。


     不活化ワクチン:増殖させた病原体を死滅させたワクチン。
          効果の発現が遅く、持続時間が短いです。


◆ワクチンで予防できる伝染病について

 わんちゃんにワクチンを接種すれば病気を100%予防できるわけではありません。

 たとえば人がインフルエンザワクチンの予防接種をしても、インフルエンザの種類によってはかかることがありますし、普通の風邪には効きません。しかし、予防接種をしておけば、仮にインフルエンザにかかってしまったとしても重症にならずにすみます。

 わんちゃんの混合ワクチンも、人のインフルエンザワクチンと同様に動物たちの健康に大きな影響を与える伝染病を予め防ぎ、万一病気にかかっても重症にならないようにする大切な注射なのです。混合ワクチンに種類がいくつもあるのは、伝染病の予防を動物の体調や飼育環境、病気の流行に応じて行う必要があるためです。
 
 

◆子犬のワクチン接種時期

 生まれてすぐのわんちゃんは、母乳を飲むことで伝染病に対する免疫(移行抗体)を母犬から譲り受けます。この移行抗体は生後6~8週間位で消失するため、完全に免疫を失う前にワクチンを接種する必要があります。ワクチンを接種することにより、子犬自身が免疫(抗体)を持つことができるようになります。
※母乳を飲んでいないわんちゃんは、早目に1回目の接種を行う必要があります。

1回目の接種から1カ月後に2回目、さらに1カ月後に3回目のワクチンを接種します。
その後は年1回、定期的に接種します。



※3回ワクチンを接種する理由
  子犬に移行抗体が20%以上残っているとワクチンを接種しても抗体を作れません。
  できれば移行抗体が20%以下になったらワクチンを打てればよいのですが、
  その時期を特定することは難しいため、ほぼすべてのわんちゃんで移行抗体が消失
  するであろう時期にワクチンを接種する方法がとられています。
  生後90日~120日までにほとんどのわんちゃんで移行抗体が消失しますので、
  生後90日~120日の間に3回目のワクチンを接種することが重要です。


◆成犬のワクチン接種時期

人間の予防接種は1回で効果が一生続くものが多いですが、わんちゃんの予防接種ワクチンは効果が短いため、毎年定期的に接種して伝染病を予防するようにしましょう。
※妊娠中のわんちゃん、病気で治療中のわんちゃんなどは、ワクチンを控えた方が良い場合もありますので獣医師にご相談ください。




◆ワクチンの接種間隔について

「ワクチンは3年に1回の接種で良いらしいって話を耳にしました」という方が時々いらっしゃいます。

これは、AAHA(アメリカ動物病院協会)という団体が作製した、犬のワクチネーションガイドラインの「コアワクチンは3年に1度で良い」、という話をきかれたのだと思います。AAHAの実験施設において、コアワクチンの効果が3年以上持続したというデータに基づいた内容です。しかし、レプトスピラワクチンの効果は1年弱というデータが出ています。また、このデータは飼われている環境におけるストレスや病原体の流行などが考慮されておらず、長期的な追跡調査も行われていないため、現在アメリカでも論議中です。

日本ではレプトスピラのような、ワクチンの持続期間が短い伝染病の流行があることや、ウイルス単体のワクチンが手に入りづらいため、犬の3年に1回のワクチンは実現が難しい状況です。
狂犬病ワクチンに関しては年1回の接種が義務付けられています。
また、アメリカよりもワクチン接種率が低いこと、ペットショップでの子犬の生体販売が行われていることなど日本特有の問題があります。
このような点から、現在当院では原則年1回の混合ワクチン/狂犬病の予防接種をお勧めしています。


◆ワクチンの副作用について
ワクチンは伝染病からわんちゃんたちを守るために大切な注射ですが、弱くした病原体を体内へ入れるため、稀に副作用がでてしまうことがあります。1/15000の確立で起こる可能性があると言われています。現在、副作用を0%にする研究が進んでいます。

 
  軽度  一時的な発熱、元気消失、食欲不振がワクチン接種後1~2日見られます。
        ⇒自然に治る場合がほとんどです。

 
  中等度 顔や首まわりに赤みや腫れが見られます。嘔吐や下痢を起こす場合あります。
        ⇒注射で治すことができます。

  重度  ワクチン接種後すぐに、呼吸困難などの生命にかかわる反応
      (アナフィラキシー反応)が見られることがあります。
        ⇒すぐに治療を行う必要があります。
※これらの反応は、ワクチン接種後数分~3日以内に起こります。


●重篤な副作用を抑えるために

 ・ワクチン接種後、少なくとも1時間はわんちゃんの様子を観察して下さい。
 
 ・ワクチン接種後、1日は激しい運動やシャンプーを避けて下さい。

 ・季節性のアレルギー性疾患を持っているわんちゃんは、
  アレルギー症状の出ていない時期にワクチンを接種するように心がけてください
 

 ・過去に副作用と思われる症状が見られた場合は、
  ワクチン接種前に獣医師に伝えて下さい。
  予め副作用をおさえる注射や内服薬投与を行うことができます。

 ・心配なことがあれば、動物病院に相談して下さい。
    


    獣医師とよく相談し、
    大切な家族であるわんちゃん・ねこちゃんを
    怖い伝染病から守ってあげましょう。
2011/12/19 00:36
ワクチンの話
本格的な冬に向けて、朝晩とだいぶ冷え込むようになって来ましたがみなさん体調を崩したりしていませんか?
 冬といえばインフルエンザの流行の季節ですね。そろそろ予防注射を受けたという方も多いのではないでしょうか?この予防注射に使われているのがワクチンですが、現在ワクチンはインフルエンザのみならず、様々な感染症に対するものがあります。ワクチンは感染症の予防という面では人医療のみでなく、獣医療においても大切な役割を果たしています。
 既にみなさんもご存じの通り、わんちゃんねこちゃんにおいてもワクチン接種によって予防できる病気があります。そして、今回のコラムではねこちゃんの混合ワクチンから紹介しようと思います。

ワクチンは18世紀初頭にイギリス人のエドワード・ジェンナーにより発見された天然痘のワクチンが最初とされています。最初は乳牛の世話をしている人たちが牛痘にかかった人に、天然痘になる人がいないことから、そこに着目し、これを応用して創りだされたのが天然痘のワクチンだったようです。その後、ルイ・パスツールにより弱毒化された病原体の接種が免疫獲得につながることが証明されると、様々な人の手を経て安全かつ効果的なワクチンの開発が行われてきました。
現在、ワクチンには大きく分けて生ワクチンと不活化ワクチンがあります。いずれのワクチンも健康な体の中に病原体を摂取することで免疫反応を誘発します。この免疫反応により体が抗体を作るようになると、以降、感染源となる病原体の進入時にはその抗体の活躍により病気に感染することを防いだり、感染してもその症状を軽度に抑えることができます。

さて、本題のねこちゃんのワクチンですが、当院で扱っている混合ワクチンには3種と5種があります。この他、単味のワクチンで猫エイズのワクチンも用意しております。それぞれによって予防できる感染症は以下のとおりです。毎年接種しているという方も、どんな病気のワクチンなのかもう一度確認してみてください。


猫の混合ワクチン

3種混合ワクチン            5種混合ワクチン

・猫ウイルス性鼻気管炎         ・猫ウイルス性鼻気管炎
・猫カリシウイルス感染症        ・猫カリシウイルス感染症
・猫汎白血球減少症           ・猫汎白血球減少症
                    ・猫白血病ウイルス感染症
                    ・猫クラミジア感染症





<猫ウイルス性鼻気管炎>

・猫ヘルペスウイルスが原因
・鼻炎、くしゃみ、などの呼吸器症状

特に子猫では症状が重篤となり鼻汁、くしゃみに続き発熱、元気消失、食欲不振がみられることもあります。
その他にも症状が眼にも及び、角膜や結膜に炎症がおきて目やにが増えたり、見た目にも眼が腫れ上がってしまうことがあります。
 更に、クラミジア、ボルデテラなどの病原体と混合感染を起こすことにより、症状がより重症化することがあります。
 この感染症はねこちゃん同士の間で感染が成立するため、複数飼育のお宅では、他のねこちゃんに移らないよう配慮が必要です。また、回復後にもウイルスが潜伏感染するとそのねこちゃんがキャリアと呼ばれる感染源になることがあります。

<猫カリシウイルス感染症>

・カリシウイルスが原因
・鼻汁、目やに、くしゃみ、食欲不振 など

悪化すると、舌や口の中に潰瘍をつくることがあります。
また、重症例では死亡することもあります。



<猫汎白血球減少症>

・パルボウイルスが原因
・白血球減少、発熱、元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢などの消化器症状 など

悪化すれば死に至ることもあります。
特に子猫では症状が重篤化し、死亡することがあります。
感染猫は回復しても排泄物中にウイルスを排泄します。

<猫白血病ウイルス感染症>

・レトロウイルス科の猫白血病ウイルスが原因
・全身リンパ節の腫脹、発熱、元気消失、食欲低下 など

感染後、急性期には血液検査で白血球の減少、血小板減少、貧血などがみられます。
特に子猫ではこのような症状が重症化し、死亡することもあります。感染したねこちゃんは、このような急性期を乗り越えた場合、一過性の感染で終わる場合とウイルスを体内に保持し続けて持続感染となる場合があります。持続感染となった場合、その後もリンパ腫、白血病などの造血器腫瘍や、貧血を起こしたり、ウイルスによって引き起こされる免疫不全、免疫異常により、二次感染を起こしやすくなります。
この感染症は、母猫が感染している場合、生まれてくる子猫も胎盤を介して感染、もしくは母猫の母乳から感染をすることがあります。
また、成猫でもウイルスは唾液を介して感染するため、ケンカなどによる噛み傷からは効率に伝染すると考えられています。その他にもグルーミングや食器の共有により経口感染することがあります。

<猫クラミジア感染症>

・クラミジアという細菌より更に小さな病原体が原因
・結膜炎、目やにの増加、目が腫れるなどの症状
・鼻汁、くしゃみ、咳などの呼吸器症状人獣共通感染症です。

稀ですが人での発症も報告があります。

<猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)>

・レトロウイルス科に属する猫免疫不全ウイルスが原因
・猫エイズとも呼ばれる
・症状は時期により異なる

 
ウイルス感染後、4~6週間の潜伏期の後、急性期と呼ばれる時期に移ります。この時期は全身のリンパ節が腫れたり、発熱、白血球減少が見られることがあり、数ヶ月~1年にわたりこのような時期が続くこともあります。この時期を過ぎると無症状の時期が続きます。
その後、慢性的な症状がみられるようになり、この時期には免疫力の低下によって様々な症状が現れるようになります。よく見られる症状は歯肉炎、口内炎、口臭やよだれ、慢性的な鼻炎、結膜炎ですが、慢性的な下痢や発熱を起こすこともあります。
更に、エイズ期と呼ばれる時期になると免疫機能が働かない免疫不全の状態になるため、日和見感染、悪性腫瘍が発生しやせ細り衰弱して死に至ります。
猫免疫不全ウイルスはこのウイルスに感染している猫の唾液がケンカ傷などから体内に入ることにより感染しますが一度感染するとこれを完全に治す治療法はありません。
感染しないことがこのウイルスから身を守る唯一の方法になります。

これらの感染症がねこちゃんのワクチンで防げる病気です。
ねこちゃんの混合ワクチンの接種は初年度に2回、2年目からは年に1回の接種が推奨されます。猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のワクチンに関しては初年度は3回、2年目からは年に1回の接種となります。月齢や個々の生活環境、体調によりこの限りではないこともありますので、接種するワクチンの種類や接種時期については診察の際に獣医師にご相談ください。


次回のコラムではわんちゃんの混合ワクチンについて紹介したいと思います。

2011/11/30 14:11
お尻から米粒?!きし麺?!!
すっかり秋めいて朝晩肌寒いですが、みなさん体調を崩されていないでしょうか?
ところで秋と言えば、食欲の秋!!新米がおいしい季節ですね☆新米のおこぼれを頂いているワンちゃん、ネコちゃんもいるかもしれませんが、肛門付近に米粒が付いているのを見たことはありませんか?!
「あら、昨日あげたごはんがそのまま出て来ちゃったのかしら?」
違います!!
それは・・・
「瓜実条虫」(うりざねじょうちゅう)という名前の寄生虫です!!
米粒のような片節
瓜実条虫

虫体の全長は50-70cmに達しますが、「片節」という1cm前後の分節が連なって出来ていて、最末端の片節をひとつずつ離断し、これが糞便と共に排泄されます。排泄された片節は活発に伸縮しながら糞便表面や肛門付近を運動するため、人目に触れやすいのです。

虫が動くので肛門周囲に痒みを感じ、お尻を地面にこすりつける仕草が見られることがあります。時間が経つと乾燥して動かなくなるので、その姿はまさに米粒!!

では、どうやってこの虫がワンちゃんやネコちゃんに感染するのでしょう?!
原因は、ノミです!!
瓜実条虫の生活環
よって、予防方法は単純♪ ノミの予防・駆虫を定期的に行えばよいのです!!



ちなみに、寄生虫には様々な種類があります。
当院の患者さんに多い他の寄生虫をランキング形式でご紹介しようと思います。ここ静岡県島田市付近に多い寄生虫です。

輪ゴムのような虫体
1位 回虫

「お尻から白い輪ゴムが出てきた?!!」


体長は4-18cm、色は白色~黄白色。主に3カ月齢未満の子犬に感染します(ネコちゃんは成猫でも感染します)。
何故子犬かというと、お母さんのお腹の中にいる時に胎盤を介して(犬のみ)、もしくはお母さんの乳汁を介して(犬・猫)感染するからです。
ですから、子犬や子猫がお家にやって来たら、
必ず一度は糞便検査を受けましょう!
回虫の生活環
成犬が感染すると回虫は幼虫のまま体内にとどまり、妊娠した場合に子犬への感染源となります(成犬の場合、糞便検査で寄生虫が検出されなくても感染している可能性があります)。

子犬や子猫が感染すると、下痢嘔吐発育不良お腹が膨れるなどの症状が現れます。また、元気が無くなったり、体重減少、貧血なども見られ、ひどい場合には命に関わることもあります。一方、成猫や成犬が感染すると、下痢が見られることもありますが、多くは無症状です。
糞便中のオーシスト
2位 コクシジウム

顕微鏡でしか見えない小さな寄生虫です。

糞便中に排泄された虫の卵(オーシストと言います)を口から摂取したり、オーシストを食べたネズミを食べると感染します。オーシストは丈夫で、環境中で長く(場合によっては1年以上)生存できるため、直接便に触れなくても感染する危険性があります。

もしも感染してしまったら、食器や、糞便の付いた物は毎回熱湯消毒をする必要があります。

さらに、今まで紹介した虫は基本的に1回駆虫薬を使えば落ちますが、この虫を退治するためには、最低1週間毎日駆虫薬を飲ませる必要があります。
コクシジウムの生活環
子犬や子猫が感染すると、水のような下痢粘液や血が混ざった下痢がみられ脱水を起こすこともあります。嘔吐や食欲の低下により、発育不良や衰弱が起こることもあります。
成猫や成犬では、下痢や軟便が見られることもありますが、多くは無症状です。
きし麺のような虫体
3位 マンソン裂頭条虫

「お尻からきし麺?!!」
体長はなんと、0.6-1.5mにもなります!!この虫も瓜実条虫と同じように片節からできていて、数個の片節が連なって糞便と共に出て来ます。

カエルやヘビ、鳥を食べて感染するので、お外に行くネコちゃんに非常に多いです!

大抵の駆虫薬は飲み薬がありますが、この虫の駆虫には注射が必要です。また投与量も多いので、注射の副作用で一時的に元気食欲が無くなることがあります
マンソン裂頭条虫の生活環
※各生活環は一部簡略化してあります。
※画像出展:「犬・猫・エキゾチックペットの寄生虫ビジュアルガイド」interzoo
ここで紹介した虫はごく一部で、ワンちゃん・ネコちゃんに感染する寄生虫は他にもたくさんあります。「うわぁ~~気持ち悪い!!」で終わらせてはいけません!いずれの虫も、下痢だけでなく、大量寄生すれば元気や食欲が無くなります。特に子犬や子猫では命に関わることもあります。人に感染する虫もいます

定期的な糞便検査と予防を心がけましょう。

予防方法
・ネコちゃんを自由に外に出さない
 ※どうしても外出してしまうネコちゃんは定期駆虫を行いましょう
・お散歩中に、他のワンちゃんやネコちゃんの糞便に近づかないようにする
ノミの定期駆虫・予防

 ・多頭飼育をしているお家では、誰か一頭が感染したら、全頭同時に駆虫を行う

それでも、もしも虫を発見したら、虫と便を持って来院して下さい。
2011/10/06 18:04