循環器科
動物循環器認定医の清水が循環器疾患の診療を行っています。
循環器疾患の診断には、身体検査・胸部レントゲン検査・心電図検査・血圧測定・心エコー検査を駆使し、総合的に評価します。
胸部レントゲン検査では、心臓の大きさや形、肺や気管の状態、胸水の有無などを評価できます。
心エコー検査では、実際に心臓が動いている状態を観察することができます。心臓の内腔や弁膜の構造、心臓の収縮の程度を観察したり、異常な血流の検出、血流の速さなどを計測します。
いずれの検査も痛みや危険性は無く、動物は無麻酔で横になっている状態で行うことができるので、ストレスの少ない検査です。

ワンちゃんの死因は、1位が「がん」、2位が「心臓病」です。
そして心臓病の中でもっとも発症率の高い病気が、「僧帽弁閉鎖不全症」です。
僧帽弁閉鎖不全症とは
左心房と左心室の間にある『僧帽弁』が閉じにくくなり、左心室から左心房に血液が逆流する病気です。
高齢の小型犬の発症率が高く、特にチワワ、マルチーズ、ポメラニアン、キャバリアに多い病気です。多くのワンちゃんは、8~10歳くらいで心臓病が見つかります。
『僧帽弁閉鎖不全症』のワンちゃんの心エコー検査での動画です。
心臓の内腔(左心房・左心室・右心房・右心室)の大きさや、僧帽弁の状態、心筋の厚みや動き等を観察します。
左心房と左心室の拡大、僧帽弁の肥厚・逸脱があることがわかります。

左心室を輪切りにした断面で、心臓の収縮の程度を観察します。
左心室の壁の厚み、左心室腔の大きさ(収縮期・拡張期)、心収縮率がわかります。

大動脈と左心房を輪切りにした断面です。
左心房の大きさ(1) を大動脈の径(2)と比較することで評価します。
「僧帽弁閉鎖不全症」が進行すると、左心房に負荷がかかり、大きくなります。
左心房に戻れない血液が肺に溜まると、「肺水腫」になり、突然の呼吸困難を起こし、命に直結することがあります。
ネコちゃんに最も多い心臓病が「肥大型心筋症」です。
肥大型心筋症とは
心臓の壁が分厚くなり、心臓が血液をうまく送り出せなくなる病気です。
メインクーン、アメリカン・ショートヘア、ラグドールに多いと言われていますが、動物病院で遭遇する品種として最も多いのは「日本猫(雑種)」です。
多くのネコちゃんでは、5~7歳くらいで心臓病が見つかります。

分厚くなった心臓の筋肉は、縮むのは得意でも、拡がるのが苦手になります。
図1bを見ると、血液を溜める斜線部分が、左の図1aよりも狭くなっています。
血液を溜められないということは、心臓が収縮した時に全身に送り出せる血液量が低下してしまいます。
実際のエコー画像で見てみましょう。


正常なネコちゃんの左心室の壁の厚み(1,2)は6 mm以下です。
図2bでは、壁が分厚くなり、左心室(LV)が十分に拡がっていません。
ネコちゃんの心筋症の詳しいお話は、「コラム」に掲載しています。
獣医師コラム ネコちゃんの肥大型心筋症 をご覧ください。
その他
下記のような疾患に遭遇することもあります。

画像下の心電図波形では、第Ⅲ度房室ブロックがみられます

心臓と、心臓を包む心膜の間に血液が溜まり、心臓が拡がらない状態
血圧が維持できず、ワンちゃんはぐったりしています。命の危機です!!
「うちの子心臓病かな?」「かかりつけの先生に、心雑音があると言われた」というご家族の方、心臓病の診療に苦慮されている先生方、お気軽にご相談下さい。